やさしくない雨が今日もまた落ちているから

私の妄想は、いつもの通り、あの雨の日の椎名町へ飛んでいく。記憶はどんどん上書きされて、登場人物達は細部まで復元されている。それが正しい記憶なのか、ほかのそれらと同じように自分に都合のいい部分だけが強調されているのか、書きかえられているのか・・・いやきっと書きかえられて脚色されているに違いないのだが。彼はあの頃の歳であのときの服装だし、彼女もまた、あの歳のあの彼女だ。あの日の椎名町の駅舎の景色は、私の中で何度も繰り返されるのだ。椎名町の駅舎を思い出させる雨の降り方がある・・・とでも、表現すればよいのだろうけれど。

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雨が降っている

深夜12時。音をたてて雨が降っている。雪が降る、その音を聞いたことがありますか。雪にも音があるのをご存じですか。そう訊いた少女はすでに他界した。彼女は老いることをしなかったのだった。

島君は車でやってきた。

旧友の突然の病の見舞いに来てくれたのだ。だから、久々に飲んだのだ。うまい酒だった。翌日。撮ってあった長いドラマの最終回を観た。倉本聰だ。中島みゆきの歌を聞いて、吉田拓郎の曲も聞いた。だから,久々に吉本隆明の全詩集を引っ張り出した。一番好きなのは一番最初に載っていて一番最初に書かれたはずの【固有時との対話】だ。長い詩だ。要するに脈絡がないのだ。僕には脈絡はないのだ。

記憶を失った携帯電話

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携帯電話の操作を誤った。携帯電話が約1年分の記憶を失ったのだ。1年間のすべての記憶をなくしてしまったのだ。修正されたアドレス・電話番号。1年間に受け取ったメール。もちろんすべてのメールを残すわけもないけれど、なくしたメールは大切なものばかりだ。大事な人のメールだけだ。それを失ったのだ。PCと違ってもう二度と復元することができない。

もうひとつ別の物語が動いていたということ

彼女の物語には僕も登場していて、けれどそれは僕の記憶とは違うもので、僕そのものが少し違う。第一に、彼女は僕の中では、主要人物ではないのだ。だからこそ僕は40年もの間、彼女の消えた世界を生きてきた。彼女のいない世界を生きてきた。彼女たちは僕の世界にはいなかったのだ。彼女の世界には僕が生きていた。どのように埋めればよいのか。おもしろい。