テグタン

昔、僕は辛いものが好きだった。好きだったかどうかは明言できないけれど、食べることはできた。こんなに髪が薄くなる以前のことだ。浦安駅前にとんでもなく辛いものを食べさせてくれる焼き肉屋があった。ずいぶん年上のバイト先の先輩たちと訪れるときだけ、堀江さんが注文するときは激辛のテグタンを出してくれたものだ。僕らは夏の仕事の終わりにはその店でごちそうになった。そして、それこそ食事の締めに激辛の「赤もの」を食べた。この激辛の赤ものは翌日、オシリが辛くなるほどのものだった。
堀江さんはとにかく辛いものが得意だった。僕はこの人物のことを半分は尊敬し、半分は哀れんでいた。
それはともかく、僕はこの赤ものの会に、一度だけまだ高校生になり立てのE子を同伴させた。彼女は赤ものをひと匙だけ口に入れたが、あとは全部残した。E子というのは彼女の仮名ではなく、友人たちが彼女を呼ぶときの愛称だ。
それは夏の終わりだった。それも夏の終わりだった。その店も、ずいぶん前に閉まってしまった。

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